しかし方怡は眉をひそめ、首を振った。「なぜかわからないけど、彼らの病気を治せないの」
「治せない?」景飛は困惑した。「超能力者による傷じゃなければ、全部治せるんじゃないの?」
方怡は首を振った。「全部が治せるわけじゃないわ。例えば、炎操作超能力者の場合、その異能は火よ。火をつけた後、火が広がって燃え広がったものが人を焼いた場合、それは普通の火傷だから、私には治せないの」
景飛は眉をひそめ、思わず口を開いた。「でも彼らは超能力者に喉を傷つけられただけじゃないか。病院での検査でも何も問題なかったのに」
方怡は即座に唇を噛んだ。「それはどういう意味?」
景飛は戸惑った。「え?」
方怡はため息をついた。「私が全力を尽くしていないと疑っているの?申し訳ないけど、私も万能じゃないわ。でも先ほど本当に全力を尽くしたのよ」
景飛が何か言う前に、鄭直が飛び出してきて方怡の前に立ち、景飛を怒りの目で見つめた。「怡ねえさんにそんな言い方できるのか?俺が頼んで来てもらったんだぞ。怡ねえさんは親切で助けに来てくれただけなのに。なのに今、文句を言われるなんて!」
景飛:?
いつ文句を言ったというのか?
ただ不思議に思っただけなのに!
秦爽は我慢できずに口を開いた。「違うよ、私たちはただ状況を詳しく知りたかっただけ。そんなに敏感にならないで...」
方怡はため息をついた。「私に何か誤解があるのかもしれないけど、私は本当に万能じゃないの。もういいわ、余計なことに首を突っ込むべきじゃなかったわ」
方怡は言い終わると、向淮を恨めしそうに見た。
向淮がここにいると知らなければ、彼女はそもそも来る気すらなかったのだ。
でも皮肉なことに、この男は依然としてそこに寄りかかったまま一言も発せず、まるでこの件が自分とは無関係であるかのようだった。方怡はそれを見て視線を外し、さっさと立ち去ることにした。
薛夕は終始彼女を見つめていた。
どう考えても、方怡が来てくれたことは、たとえ治せなかったとしても、感謝すべきことだった。
そう考えていた時、方怡が曲がり角で突然振り返り、部屋の中には薛夕と秦爽の二人だけが彼女を見ているのに気づいた。
方怡は薛夕を見ると、突然唇を歪め、挑発的な笑みを浮かべた。
薛夕の瞳孔が一瞬収縮し、眉をひそめた。