ドアの前に立っていたのは向淮ではなく、厳格な表情の鄭直だった!
一瞬、方怡の表情が崩れそうになったが、さすが気功の達人だけあって、すぐに表情を取り戻し、優しく尋ねた。「アチャン、どうしたの?」
鄭直は背筋をピンと伸ばして、口を開いた。「怡ねえさん、前に話した件なんですが、秦爽が他人の声を損なってしまって、治療を手伝ってもらえませんか」
方怡の目が一瞬揺らいだが、依然として笑顔を保ったまま「あなた、彼女のことが嫌いだったんじゃない?」
鄭直は咳払いをして「確かに嫌いですが、こういうことは規則通りにやらないと。それに……」
鄭直の目が定まらない様子で「薛夕という人は、実はそれほど嫌な人じゃないかもしれません……」
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取調室にて。
景飛は薛夕の傍らに立ち、時々向淮をちらりと見ながら、口を開いた。「息子の今回の振る舞いはなかなかだな。以前なら、こんなことで前に出ることはなかっただろう」