第361章 憂鬱な錢たいちょう

その人が動き出すと同時に、後から来たもう一人も動き出し、二人は直接相手の百人以上の陣営の中に突っ込んでいった。

「すげえな、こんなに強いとは」第七グループのリーダーは驚きの目で二人を見つめた。

「この二人は絶対に普通の人間じゃない」葉婉晴は眉をひそめ、目の前の二人が百人と戦おうとしていることに驚いた。

ここは路地裏でもなく、狭い場所でもない。路地裏なら二人で百人と戦うことも可能かもしれない。なぜなら百人のうち同時に攻撃できるのは四、五人程度だからだ。

そうなれば、少し腕の立つ達人なら対処できる。

しかしここは路地裏ではなく、開けた場所だ。このような場所で戦うのは、彼ら二人にとって何の利点もない。それなのに、彼らは真っ直ぐに突っ込んでいった。

頭から血を流している方は特に勇猛で、戦いの最中も全く躱すことなく、相手の攻撃を体に受けていた。

そのチンピラたちの中には武器を持っている者もいた。

戦いは激しさを増していった。

バン!

銃声が響き渡った。

すると全員が手を止めた。

銃を撃ったのは葉婉晴だった。どう考えても彼女は特別行動部の部長なのだから、彼らの暴れ回るのを放置するわけにはいかない。もしこのまま戦いが続けば、必ず大勢の負傷者が出るだろう。

「警察だ。私たちは食事に来ただけだ。今すぐ立ち去れば、見逃してやる」葉婉晴は冷たく言い放った。

「誰を脅してるんだ?教えてやるが、俺の兄貴は錢たいちょうと知り合いなんだぞ。錢たいちょうを知ってるか?江海市で一番有名な警察官だぞ。お前らみたいな連中なんて、錢たいちょうなら一瞬で首にできるんだ」そのチンピラのボスが大声で叫んだ。

彼の態度は少しも萎縮することなく、錢たいちょうの名前を出す時は特に胸を張っていた。

「はぁ、虎の威を借る狐だな」夏天は呆れて首を振った。彼は相手の言う錢たいちょうが誰なのか当然知っていた。江海市でその名の錢たいちょうは恐らく一人しかいないのだから。「錢たいちょうを知ってるって言うなら、電話して来てもらえよ」

「お前なんかに錢たいちょうに会う資格があるか!」そのチンピラのボスは夏天を軽蔑的な目で見た。

「人を呼べと言ってるのに呼ばないなら、全員消えろ」夏天は非常に苛立った様子で言った。