第364話 任務

夏天という名前を聞いた時、冰川と胡列の二人は呆然としてしまった。

特に冰川は、夏天を信じられない表情で見つめていた。さっきまで夏天のことを尋ねていたのに、まさか今、目の前に立っているとは。しかも、共に戦いを繰り広げたのだ。

来る前に、彼は夏天についていくつかの話を聞いていた。ただし、それらは全て冰心の従兄から聞いた話だった。

彼はずっと夏天のことを、ただのちょっとカンフーができる程度の人物だと思っていた。今回来たのは、一つは冰心を連れ戻すため、もう一つは東北の人々の面子を取り戻すためだった。

前回、冰心の従兄が帰った時は、かなり惨めな状態だった。

だから今回彼が来たのは、主にその夏天という人物を見極めるためだった。

夏天に教訓を与えようと、様々な出会い方を想像していたが、このような形で出会うとは思ってもみなかった。二人が共に戦うなんて。

そして彼は夏天の実力も目の当たりにした。

だから、もう夏天を試す必要はなかった。

冰川は右手を差し出した。「改めて自己紹介させてください。私は冰川、冰心の兄です。」

「知っています」夏天は真剣な眼差しで冰川を見つめた。

二人の手が握り合わされた。どちらも力を入れることはなく、これは純粋に友好的な握手だった。

周りの人々は息を殺していた。まるで大きな戦いが始まりそうな雰囲気だった。彼らは冰川と夏天の間に何があるのか知らなかったが、現場の緊張感は十分に感じ取れた。

現場は今、あまりにも静かだった。恐ろしいほどの静けさだった。

まるで嵐の前の静けさのようだった。

「私が来た目的は二つある。一つは妹を連れ帰ること、もう一つはあなたにどれほどの実力があるのか確かめること。我々東北の者をなめるとは」冰川は淡々と言った。表情からは何も読み取れなかった。

「連れて帰ることはできない」夏天も同じように淡々と答えた。表情は冰川と全く同じだった。

「先ほどの件で、あなたが漢だと敬意を持ちました。私が最も尊敬するのは、強い実力を持ち、愛国心のある人間です。先ほどの出来事で、あなたはその両方を持っていることがわかりました。だから、あなたを困らせたくはありません」冰川は真剣な表情で夏天に語りかけた。

夏天は既に冰川の尊敬を勝ち得ていた。冰川は典型的な東北の漢で、性格は素直で、愛憎がはっきりしていた。