第371話 やはり罠があった

冰川は先ほどのような衝動的な気持ちはもうなくなっていた。彼はその島國の超上忍である沙比一川が胡列を傷つけることができたということは、その実力は侮れないものだと理解していた。そして、胡列を見つけることができたということは、すでに夏天たちの居場所を突き止めていたということを証明していた。

しかし、なぜ特に胡列を狙ったのか。実際、冷静になって考えれば、その理由は明白だった。

この四人の中で最も実力が高いのは彼と夏天であり、葉婉晴は特別行動部の部長として高い地位にあり、もし彼女に何かあれば、島國人たちは華夏から出られなくなるし、DR10も持ち帰ることができなくなる。

だから葉婉晴に手を出すことはできず、この四人の中で胡列だけが安全に手を出せる相手だったのだ。

彼は夏天たちの仲の良さも知っていた。胡列を襲えば、夏天と冰川は必ず復讐に来るだろう。そうすれば、彼の罠にまんまと嵌ることになる。

冰川は理解していた。夏天の言うことは全くの正論で、もし先ほど自分が行っていたら、敵の罠に嵌っていたことだろう。

今、夏天は罠と知りながらも行った。兄弟の傷と華夏の尊厳のために戦わなければならない。もちろん、夏天は罠と分かっているので愚かにも飛び込むことはないだろう。

冰川は夏天が去った後、ここも同様に安全ではなくなることを知っていた。彼がすべきことは、これからの挑戦に立ち向かうことだった。

二人にはそれぞれの役割があった。

一人は攻め、一人は守り。

冰川が江海市に来たのは元々夏天に問題があってだったが、今や二人は共に香港に来て、肩を並べて戦い、今は兄弟の仇を討つため、島國の超上忍と対峙している。

「夏天、気をつけて。生かしておく必要はない。殺してかまわない」と葉婉晴は夏天に言った。

「分かっている」夏天は決して油断できなかった。島國の超上忍は普通の新人ではない。その実力は華夏の玄級後期と比べても遜色なく、さらに彼らの忍術も侮れない。

「ここは俺に任せろ。安心して行け。この戦いが終わったら酒を奢る」冰川は夏天の肩を叩いた。彼は今や夏天を認めていた。

以前、他人から夏天についてどんな話を聞いていたとしても、今は夏天を認めている。冰川とはどんな人物か。東北軍區最年少の少将であり、東北軍區の兵王だ。

彼に認められる者は、おそらく夏天のような異才だけだろう。