「このやろう」冰川は夏天の側に来て、彼の肩を叩きながら言った。「よくやった」
「彼は冰心の兄だったのね。だから二人の様子がずっとおかしかったわけだわ」葉婉晴はようやく理解し、最初から今まで二人の間に多くの変化があった理由が分かった。
「おばさん、休みに戻るよ。今日は少し疲れた」夏天は二人に向かって言った。
「怪我してないの?」葉婉晴は疑わしげに夏天を見つめて尋ねた。
「もちろん大丈夫だよ、ただ少し疲れただけさ」夏天は確かに疲れていた。それに瞬身の術の研究もしなければならなかった。島國の達人たちは全員片付いたので、もうここに危険はなかった。
「首が」冰川は夏天の首に血痕があるのを見つけた。
「ああ、これか。かすり傷だよ」夏天は軽く笑った。それは沙比一川の短刀で切られた跡だった。
夏天の首の血痕を見て、冰川と葉婉晴はさっきの戦いがどれほど危険だったか分かった。喉元だったのだ。もし相手の刃が数センチ深く入っていたら、夏天はもう死んでいただろう。
二人とも何も言わなかった。葉婉晴は今になって恐ろしくなった。もし夏天に何かあったら、亡くなった夏天龍にどう説明すればいいのだろう。
冰川は心の中で夏天を評価し直していた。夏天は生死を賭けた戦いを経験したにもかかわらず、こんなにも落ち着いていて、彼を心配させないようにしている。これこそが真の兄弟の姿だ。今日から、彼は夏天を本当の兄弟として見るようになった。
夏天はホテルに戻ると、あの部屋に横たわった。
彼は獣皮を取り出した。獣皮の文字はまだ残っていたが、最初ほど鮮明ではなかった。夏天は自分の指を噛んで血を出し、それを上に滴らせると、文字が再び鮮明になった。
瞬身の術。
瞬身の術の説明を見て、夏天はようやく分かった。この瞬身の術は秦朝時代の鬼谷子先生が残した秘伝書だった。ここまで読んで、夏天は獣皮を改めて観察し直した。これほど長い時間保存できる獣皮とは一体何なのか不思議に思った。
以前の飛刀も獣皮に記されていた。
鬼谷子先生について、夏天は知っていた。彼の師匠の尹聶と、父を殺した流沙の首領である衛広は、前代の鬼谷子先生の弟子だった。