言い終わると、安素山は葉辰に向かって歩み寄り、問いただした。「若いの、私は徽安省の安素山だ。私の娘とお前の友人が頼んでいるからには!約束しよう、そのものを私に渡せば、私、安素山が部下に命じて徽安省の外まで送らせる!安全は保証する!」
威厳はあったものの、その目に宿る熱い光が彼の本心を露呈していた!
古武術家なら誰もが、葉辰の持つ宝物を狙っているのだ!
群衆の中央に立つ葉辰は、安素山を一瞥し、困惑した表情の朱雅と安若影を見やると、首を振って冷ややかに言った。「友人のためだ。今すぐ立ち去れば、生かしてやる。」
この言葉に、安素山だけでなく、その場にいた全員が呆然とした!
まるで夢を見ているかのように、先ほど何が起きたのか疑問に思った。
この若造は死に体なのに、逆に安素山を脅すとは?
安家は徽安省でトップクラスの一族なのに!
命知らずか?頭がおかしいのか?
「はっはっは、安さん、あなたの面子なんて眼中にないようですね!」
道袍姿の男が笑い出し、葉辰に向かって言った。「若いの、自分の立場がわかっていないようだな。お前は一人だが、我々の側には徽安省の八大家族と二十一の門派と勢力がある。何で我々と戦えると?」
「違う、我々華夏武道局もいる。」
長袍の老人が前に出た。
道袍の男は華夏武道局という言葉を聞いて、極度の恐怖の表情を浮かべた!
華夏武道局まで関わってきたのか?
あの域外から落ちてきた物を国家に没収するつもりか?
無数の敵意の目が長袍の老人に向けられた。
長袍の老人は何かを察したように、淡々と言った。「皆さん安心してください。あの域外の物とこの若者の命を比べれば、我々華夏武道局は後者を優先します。この者は我々華夏武道局の多くの者を殺し、罪は重大です!江南省に庇護者がいなければ、とうに死んでいたでしょう!」
「はっ——」
この言葉を聞いて、徽安省の各勢力は思わず息を呑んだ!
華夏武道局の人間を殺すとは?
正気の沙汰ではない!
瞬く間に、徽安省の強者たちの葉辰を見る目が変わった。
遠くにいた安若影と朱雅は背筋が凍る思いだった。