彼女は人を殺すのが好きではなかったので、苦しみながら生きさせることを好んだ。
死んでしまえば楽になってしまう。まだ十分な罰を受けていないのだから。
「怒っていないなら良かった。さあ、林芸の証拠を取りに行きましょう。今度は彼らの番です」夏星河がそう言った時、その目に鋭い光が宿った。
林芸という女、彼女もそろそろ自分のしたことの代償を払う時が来たのだ。
「よし!」席牧白は楽しげに唇を歪め、アクセルを踏み込んだ。
封少煌から提供された情報に基づいて、夏星河たちはすぐに彼が保管していたメモリーカードを手に入れた。
夏星河がメモリーカードを携帯に挿入すると、中に録音が入っているのを発見した。
彼女が録音を再生すると、林芸と彼の会話が聞こえてきた。
この会話は、封少煌が人を派遣して席牧楠を暗殺しようとした時の直前のものだった。
会話の中で、林芸は明確に認めていた。席家を陥れようとしたのは自分であって、封少煌ではないと。
だからあの時の行動は、彼女の意思だったのだ。
夏星河は、こんなに重要な証拠が手に入るとは思っていなかった。
席牧白は冷笑を浮かべながら言った。「林家はずっと我が席家の弱みを握って、完全に潰そうとしていたんだろう?今度は、誰が誰を潰すか見ものだな!」
夏星河は尋ねた。「今すぐ警察に通報しますか?」
「もちろんだ」
席牧白はすぐに警察に通報し、直接張局長に電話をかけた。
しかし張局長は彼にこう告げた。「林芸だって?彼女はもう出発したよ。さっき林家の者が迎えに来てな」
「出発した?」
「ああ、つい先ほどだ。まだ道中のはずだ」
「すぐに逮捕してください。我が席家は彼女を告訴します!」
「分かった、すぐに命令を出そう」
電話を切ると、席牧白は低い声で夏星河に言った。「林芸は逃げ出した。だがA市には戻させるわけにはいかない。さもないとこの事件はT市の警察が担当できなくなる」
夏星河は即座に彼の意図を理解した。
林家はA市で強大な勢力を持っている。もし林芸が戻ってしまえば、彼女を罰するのは非常に困難になるだろう。
だから、ここから逃がすわけにはいかない。この地の警察にまず事件を担当させなければならない。
「行くぞ、今すぐ彼女を阻止する!」席牧白は瞬時に決断を下した。
夏星河は直ちに彼と共に車で出発した。