妖精女王の獣魂が憑依し融合した剎那、韓森の目に映る世界はすべてがスローモーションのように遅くなった。空中から凶暴に襲いかかってくる変異黒羽獣たちの動きも、彼の目には全てスローモーションに見えた。
最初の変異黒羽獣が目の前に迫ってきたとき、韓森は手で押し、その勢いを借りて相手の頭上を飛び越え、同時に手にした短剣でその変異黒羽獣の喉を切り裂いた。
「変異黒羽獣を狩り、変異黒羽獣の獣魂を獲得。その血肉を食すことで0から10ポイントの変異遺伝子をランダムに獲得可能」
韓森の心は古井のように静かで、頭の中に響く声にも全く動じることなく、躊躇なく一匹の変異黒羽獣の体を踏みつけ、その変異黒羽獣は悲鳴を上げ血を吐きながら落下していった。
その一蹴りの力を借りて、韓森の体は瞬時に横に二メートル移動し、別の変異黒羽獣の前に到達。短剣でその変異黒羽獣の頭を切り落とし、同時に回転しながら隣の変異黒羽獣の体を押さえ、三尺ほど跳躍して二匹の変異黒羽獣の攻撃を避けた。
皇甫瓶晴は空中で鬼魅のように動く韓森を見て、呆然としていた。
天空を縦横無尽に駆け巡り殺戮を繰り広げるその姿、空に散る鮮血は、まるで人間とは思えないものだった。少なくとも皇甫瓶晴は第一避難所世界でこれほどの実力を持つ者を見たことがなかった。
「鋼甲避難所にこれほど恐ろしい人物がいたとは、今まで全く聞いたことがなかった」皇甫瓶晴は複雑な表情を浮かべた。彼女から見れば、韓森は間違いなく十大神子に入れる実力の持ち主で、しかも十大神子の中でも下位には位置しないはずの人物だった。そんな人物が神戰にすら出場できなかったとは。
しかしよく考えてみると、皇甫瓶晴も納得がいった。韓森は確かに恐ろしいほど強かったが、今年鋼甲避難所を代表して出場したのはB神のような強者だった。韓森が神戰に出場できなかったのも理解できた。
皇甫瓶晴が考えを巡らせている最中、韓森は一匹の変異黒羽獣を踏み台にして跳躍し、再び魔角蛇弓を召喚して、近くで咆哮しながら変異黒羽獣たちに攻撃を命じている神血黒羽獣王に向かって矢を放った。
今回は韓森と神血黒羽獣王の距離があまりにも近く、変異黒針蜂の矢は放たれるや否や、韓森と共に神血黒羽獣王の目の前に到達した。