みんなが振り向き、話している人を見た。
なんと江口亜英だった。
彼はクマ目をして、イライラした表情を浮かべていた。
森川辰は驚いた。「お前が彼女の夫か?」
「もちろん違う。」江口亜英は口をとがらせた。「彼女の夫が、お前がここで彼女をいじめているのを知ったら、きっとお前と命がけで戦うはずだ!何もできないわけがない?」
森川辰は言葉を失った。
彼は痛みをこらえて立ち上がり、江口亜英を険しい目つきで見つめた。「彼女を二組に異動させる。」
「だめだ。」江口亜英は威厳を持って言った。「彼女は一組の人だ。お前が決める権利はない。」
彼は相変わらず生意気な態度を取っていたが、栗原愛南の目には以前よりもずっと受け入れやすく見えた。
森川辰は不思議そうに尋ねた。「彼女はただの縁故採用者だろう、お前はが一番嫌い人なんじゃなかったのか?」
江口亜英は嘲笑した。「彼女を嘲笑う資格があるのか?彼女はせいぜい社員だが、お前は学部卒なのに二組のリーダーだぞ!よくほかの人のことを縁故採用者だなんて言えるな?」
森川辰は彼に怒られて顔が真っ赤になった。「違う、俺は森川家本家の嫡孫だ!」
「ああ、森川グループの最も分かりやすい縁故採用者だな。」
…
森川辰は深呼吸をして、突然言った。「数日後、南條博士が俺の研究開発チームに来る予定だ。江口亜英、お前の憧れの人は彼だろう?この件に口出ししなければ、二人を引き合わせてやってもいい。」
江口亜英は黙った。
新エネルギーを研究している人々の中で、誰が南條博士を憧れの存在としていないだろうか?
江口亜英はとっくに南條博士が発表した論文を何度も読み返し、読めば読むほど南條博士のすごさを感じていた。
彼はずっといろんな手段を使って、何とかして南條博士と知り合おうとしていた。
森川辰がこれを使って彼を脅すなんて…
江口亜英は南條博士への敬意を表すために一瞬躊躇したが、すぐに言った。「だめだ!」
彼は栗原愛南を見て言った。「ここで恥をさらすな、俺と一緒に戻るぞ!」