一言で、部屋の三人が一緒に彼女を見た。
栗原郁子は躊躇して言った。「南條博士はどこ?」
森川辰も期待を込めて彼女を見つめた。
栗原奥様は興奮して、激しく咳き込み始めた。「ゴホッゴホッ…どこに…ゴホゴホ…」
栗原愛南は彼女の咳が激しいのを見て、急いでお茶を差し出した。
栗原奥様は震える手を伸ばし、お茶を受け取った。
次の瞬間、お茶が彼女の手からこぼれ落ちた。
栗原奥様はそのまま食卓で気を失った。
「奥様!」
栗原愛南は驚いて叫び、無意識に彼女を支えようとしたが、栗原郁子に強く押しのけられた。
「離れろ!母さんに何をしたの?!母さん!目を覚まして…早く、119に電話して…」
救急車はすぐに到着した。
栗原愛南も車に乗って病院に行こうとしたが、森川辰に強く引き止められ、嫌悪感を込めて言った。「私生児、栗原奥様から離れろ!もし彼女に何かあったら、お前とは済まないぞ!!」
彼は力強く彼女を押しのけた。
栗原愛南は争わず、すぐにタクシーを拾い、彼らの後を必死に追った。
…
森川北翔はおばあさんと夕食を済ませ、スイートルームの外で仕事をしていた。
長時間書類を見ていると何となくイライラしてきたので、窓の外を眺めることにした。
突然、下に見覚えのある姿を見つけた。
大勢の人々がストレッチャーを囲み、入院棟の方へ急いでいた。
人々の後ろで、栗原愛南が遠くから付いてきていた。その姿は捨てられたねこのようだった。
ちっ。
森川北翔は眉を上げ、突然立ち上がって外に向かった。
一階に着くと、栗原郁子と森川辰が入院手続きをしているのが見えた。
医者が言った。「申し訳ありませんが、病室は今満室です。一時的に廊下で待っていただき、空き次第すぐにご案内いたします。」
森川辰は尋ねた。「VIP病室も空いていませんか?いくらでも払います。」
医者は答えた。「ありません。」
栗原郁子は涙ながらに言った。「辰お兄さん、どうしよう?」