女性が抱いているおばあさんの顔色は真っ青で、力なく腕が垂れていた…
森川北翔はすぐに大股で彼女たちの方へ歩み寄った!
彼は落ち着いているように見えたが、不安で一杯だった!
おばあさんは彼にとってこの世で最も親しい人だった…
ここ数年、彼女の体調は悪化の一途をたどり、家庭医も既に彼女が今年を越せないかもしれないと暗示していた…
おばあさんを失うわけにはいかなかった!
栗原愛南は彼が近づいてくるのを見て、何かを察したが、今はそんなことを言っている場合ではなかった。彼女は急いで言った。「おばあさんが心臓発作を起こされました。いつも持っている速効救心丸をちょうど使い切ってしまったので、すぐに薬が必要です。」
少し間を置いて、彼女はさらに付け加えた。「速やかに薬を飲めば大丈夫です。」
森川北翔は唇を噛んだ。
彼は手を伸ばしておばあさんを抱きかかえ、振り返ることもなく森川家に駆け込んだ。
栗原愛南はついて行かなかった。彼女の足はまだ広石若菜に抱きついかれていた。
栗原郁子は疑問に思いながら森川北翔の去っていく背中を見つめ、突然心の中に激しい不安が湧き上がった。「まさか、あの人が森川おばあ様じゃないよね?」
「栗原愛南と一緒にいるわけないだろう?彼女の夫のおばあさんじゃないか!」
広石若菜は栗原愛南から手を放し、立ち上がって体についた埃を払った。「森川さんがあんなに慌てていたのは、本当に命に関わる事態になったら、森川家が見殺しにしたと疑われかねないからだろう。そうなったら評判が悪くなるし…」
彼女は栗原愛南を睨みつけた。「彼女はそれを利用して、あのお年寄りを連れて森川家に押し掛けただけじゃないの?」
栗原郁子は眉をひそめて考え込んだ。
そうだね。
まさか栗原愛南のチンピラ夫が森川北翔であるはずがないよね?
考えすぎたんだわ…
その時、森川家の大門が開き、森川辰が出てきた。
栗原郁子の目が輝いた。笑顔で言った。「辰お兄さん、駐車場で待っててくれればよかったのに、どうして来てくれたの?」