海浜市は森川グループのホームグラウンドだ。
そのため森川北翔が入ってくると、幹部たちはすぐに群がってきた。
森川北翔は彼らと挨拶を交わしながら、目の端で入ってくるなり彼との距離を開け、こっそり逃げ出して来た栗原愛南を見た。
彼女はするすると人混みをすり抜け、隣のデザートコーナーに隠れてから、やっと体を起こし、食べ物を取って食べ始めた。
彼女は隅に隠れたつもりだったが、すでに会場の多くの人の目を引いていることに気づいていなかった。
森川北翔の瞳が深くなり、下げた手の平にはまだ彼女の腰の滑らかさと柔らかな感触が残っているようだった…
彼はネクタイを緩めると、目の前の人が取り入るように言うのが聞こえた。「森川社長、森川奥様は一緒にいらっしゃらなかったんですか?あなたはあまりにも隠し過ぎです。私たちにも社長夫人にお会いさせていただきたいものです。」