栗原愛南は下腹部に鈍痛を感じたが、我慢できる程度だった。
彼女は川内美玲の手首を掴んで言った。「トイレに行きたいんだけど」
「付き添うわ」
川内は彼女の腕を支えながら、トイレまで連れて行き、外で静かに待っていた。
しかし、心の中では不安でいっぱいだった。
愛南の顔色が青ざめ、額に冷や汗をかいているのを見て、本当に貧血かもしれないと思った。
…
その時、拘置所の面会室内。
広石若菜は笑顔で座り、取り入るように言った。「郁子、わざわざ会いに来てくれたの?」
そして続けて言った。「ここには来るべきじゃないわ。縁起が悪いから、避けたほうがいい」
彼女は心からの誠意を込めたが、栗原郁子からはただ淡々とした薄笑いが返ってくるだけだった。そして郁子は困ったような表情を見せた。
広石若菜はすぐに心配そうに尋ねた。「どうしたの?顔色が悪いわね。何かあったの?」
そして顔を曇らせて言った。「また栗原愛南のせい?またあなたに嫌な態度を取ったの?」
郁子は苦笑いして言った。「愛南のことだけど、嫌な態度じゃなくて、愛南が事故を起こしたの」
「ああ、それなら大したことないわ」広石若菜は嘲笑って言った。「あの融通の利かない性格じゃ、いつか事故を起こすのは当然よ。今回は誰を怒らせたの?懲らしめられたんでしょ?」
彼女の顔には他人の不幸を喜ぶような表情が浮かんだ。
郁子は言葉に詰まり、広石若菜の愚かさをますます感じた。
子供の頃からずっとこうだった。何もかも顔に出して、少しも取り繕う術を知らない。
あの時、一体どんな幸運が重なって、自分と愛南が取り替えられたのか、全く分からない。
郁子は目を光らせ、少し頭を下げた。「誰かを怒らせたわけじゃないの。彼女が…彼女が人を殺してしまって、今警察に拘留されているの」
「それはいいことじゃない!」広石若菜は急に興奮し始めた。「あの不届き者、死刑になるんでしょう?そうすればもう二度とあなたを怒らせることはないわ!」
栗原郁子「…」
彼女は同情的に広石若菜を一瞥し、それから咳払いをした。「彼女が殺したのは広石宗大よ」
「誰を殺そうが私には関係…え?郁子、今誰って言った?宗大?!聞き間違いじゃないわよね!!」
広石若菜は突然テーブルに身を乗り出し、非常に興奮した様子だった。