第136章 旦那様?

この言葉が出た瞬間、個室全体が静まり返った。

  皆が一斉に栗原愛晴の方を見た。

  誰かが小声で言った。「さっき森川さんは、この件は終わったって言ってたじゃないか?なぜまた持ち出すんだ」

  また別の人が言った。「誰かさんがあまりにも大げさな嘘をついたからじゃないか?もう言わせないつもりか?森川さんと栗原郁子さんが面子を立てて、暴露しなかっただけだろう。昔の情を考えてのことさ。でも私たちは甘やかすわけにはいかないよ」

  森川辰と栗原郁子はもともと楽しそうにしていたが、この言葉を聞いて二人の表情が固まった。

  森川辰はすぐに栗原郁子を見た。

  栗原郁子は咳払いをして、話題を変えようとした。「今日は尾川先生のお誕生日です。まずは乾杯して、尾川先生のお誕生日をお祝いしましょう!」

  彼女の言葉を聞いて、皆がグラスを持ち上げた。

  栗原愛南は群衆の中に立ち、無表情でグラスを持ち上げた。彼女はいつも周りの人の言葉を無視していた。ただ江口明だけが、不満と怒りと悔しさの表情を浮かべていた。

  尾川先生は主席に座らされ、状況を見てグラスを持ち上げた。

  「先生、お誕生日おめでとうございます。東の海のように福あり、南の山のように長寿でありますように!」

  同級生たちが一斉に叫んだ後、尾川先生は笑顔でグラスを持ち上げた。そして皆が座ろうとしたとき、突然栗原愛南に向かって言った。「愛南、こっちに来て、ここに座りなさい!」

  彼は自分の隣の空いている席を指差した。「やっと君を捕まえられたんだ。君と議論したいことがあるんだよ!」

  この言葥を聞いて、皆が驚いた。

  一人一人が信じられない様子で栗原愛南を見た。

  栗原愛南は動きを止め、最後にはやや困ったように尾川先生の隣に歩み寄った。「先生、お誕生日おめでとうございます」

  「ああ!嬉しいよ、君が来てくれて、私は本当に嬉しいんだ!」尾川先生は不満げに言った。「何度も電話をしたのに、大学に来てくれと言ったのに、君はいつも言い訳して来なかった...今日やっと君を捕まえられた。今日の午後は、早く帰ろうとしてはダメだぞ!私と存分に話をしなければならない!」

  栗原愛南は苦笑いを浮かべた。「先生、この間は本当に用事がありまして...」