エレベーターが到着した。
栗原愛南がエレベーターを出て、予約された個室に向かって歩き始めた。
江口明は唾を飲み込み、急いで二、三歩小走りして彼女の横に並んだ。まだ信じられない様子で、何かを確認したいようだったが、どう言えばいいのか分からなかった。
このとき、人が非常に驚いているときは、実際には言葉が出てこないものだと気づいた。
江口明はスマートフォンを指さし、そして栗原愛南を指さした。
栗原愛南は彼に優しく微笑んだ。そして江口明はぼんやりとした様子で栗原愛南について個室に入った。
森川家は海浜市で地位が安定しており、帝宮ホテルは森川グループ傘下の企業だったので、森川辰がここでVIP個室を予約するのは非常に簡単だった。
彼らの大きな個室には大きなテーブルがあり、20〜30人が座れるようになっていた。