森川北翔の車が出発するとき、森川家の本邸の車と宅配車が前後して到着した。
森川北翔は本邸の車を軽く見遣ったが、気にしなかった。
結局のところ、本邸の方では森川のおじいさんがよく森川おばあ様に安否を尋ねたり、何かを送ったりするために人を寄越していた。それらは直接森川おばあ様のところへ行っていた。
その宅配車については……
敷地内には百人以上の人がいるので、誰の荷物かわからない。
彼の車はそのまま二台の車とすれ違って通り過ぎた……
彼が遠ざかった後、本邸の車のドアが開き、運転手が飛び降りて、森川北翔の去っていく車を見ながら、門番に尋ねずにはいられなかった。「今出て行ったのは森川さんですか?」
門番:「はい」
その運転手はすぐに慌てた:「彼に荷物を届けに来たんです。森川さんはどこへ行ったんでしょうか?」
門番は頭を掻きながら:「ご主人の用事なんて私が知るわけないでしょう!」
運転手は間違った相手に聞いてしまったことを悟り、すぐに車に乗り込んで、門を通り抜けて森川おばあ様の屋敷へ直行した。
宅配車が後を追おうとしたが、門番に止められた:「誰の荷物?手ぶらじゃ入れないよ」
宅配員:「……」
こうして彼は置き去りにされてしまった!
彼は少し考えてから、自分の上司にメッセージを送った:【ボス、あなたの荷物を夕暮れ村まで届けに行ったんですが、その頑固五郎が海浜市にいるらしくて、運転手についていって海浜市まで来ちゃいました。ここはすごい豪邸で、中に入れてくれません】
栗原愛南の返信は早かった:【じゃあ帰っていいよ、待つ必要はない】
どうせ連絡先は残してあるし、お兄さんが見たら連絡してくれる……よね?
栗原愛南は少し呆然とした。
しかしすぐにこのことを頭から追い払った。
彼女は再び横目で森川北翔を見た。男性は冷たい表情で、ずっと黙っていた。
車はすぐに市役所に到着した。
栗原愛南が先に車を降りた。「開いてるわ、行きましょう?」
森川北翔は動かなかった。
栗原愛南は静かにため息をつき、ドアを開けたまま彼をじっと見つめた。
二人は約1分間にらみ合いを続けた後、森川北翔はようやく車を降りた。