第357話

弁護士は栗原井池の意図が分からなかった。これまでの健康診断は秘密だったのだが、この言葉を聞いて即座に頷いた。「分かりました。」

検査機関のほとんどは夜間は営業していない。

しかし、金の力は大きい。弁護士は栗原井池の情報を漏らすことなく、小さな検査機関を見つけることができた。

栗原井池はマスクと野球帽を着用し、全身を包み隠すように身支度を整え、弁護士と共に外出し、素早く検査機関に向かった。

検査機関でサンプルを採取し提出したが、検査機関は即座に結果を出すことはできなかった。

夜通し作業をしても、結果が出るのは翌朝になる。彼は弁護士をそこに残し、自分は外に出て、京都の街をドライブした。

一時、どこに行けばいいのか分からなくなった……

家には……両親が紀田杏結にすぐにでも子供を産ませたがっている様子と、紀田杏結の生気のない様子を思い出すと、帰りたくなかった。

しかし、他の場所も……行き場所がないようだった。

そうしてさまよっているうちに、知らず知らずのうちに南條睦希の家に来ていた。

栗原井池は車を玄関前に停め、家の中を見ると、部屋の明かりが煌々と灯っていた。突然、車から降りた。

彼は中に入らず、携帯を取り出した。

しばらくすると、森川北翔が外に出てきた。

彼はまだカジュアルな服装で、ただし物憂げな様子で、出てくるなり栗原井池を見た。「新婚の夜に、家にいないで、ここで何をしているんだ?」

栗原井池は彼を見て言った。「ちょっと気が滅入ってね、一緒に一杯どう?」

森川北翔は「すまないが、私は酒は飲まない」と答えた。

「じゃあ、お前はお茶を飲めばいい。俺は酒を飲む。」

栗原井池は彼の側に寄り、「かつて海外留学していた仲じゃないか、この面子を立ててくれよ?」

森川北翔は少し躊躇した。

彼は咳払いをし、しばらく考え込んでから、再び別荘の中を見た。

家の中の和やかな雰囲気を思い出して……

井上斉子は今夜帰らずに、ここに泊まると言い、栗原愛南と夜通し話をすると言っていた。何を話すつもりなのか、あの女は自分が奪われることを全く恐れていないのだろうか?

栗原愛南が自分のことを気にかけていないかもしれないと考えただけで、胸が苦しくなった。

思い切って栗原井池を見て「いいだろう」と答えた。

彼は栗原井池の車に乗り込んだ。