第362話

栗原家の人が来たの？

その言葉に栗原愛南は思わず紀田杏結の方を見て、栗原井池が彼女を迎えに来たのかもしれないと思った。

紀田杏結も一瞬戸惑い、そして玄関の方を見た。

紀田杏結の目には思わず期待の色が浮かんだ。もし本当に彼だったら……

でも、すぐに苦笑いを浮かべた。まさか彼が来るはずがない。

そう思っていると、数人の人影が入ってきた。先頭の二人の女性は威圧的な様子で、なんと……栗原由奈と栗原美悠纪だった！

彼女たちが入ってくるなり、雪音は恐怖に震えながら栗原愛南の足にしがみついた。目には涙が光り、明らかに前回の学校での出来事がトラウマになっていた。

栗原愛南は彼女たちの敵意を感じ取り、すぐに雪音を抱き上げて森川北翔の腕の中に置いた。「二階に連れて行って」

森川北翔はその二人の女性を一瞥し、彼女に視線で合図を送った。「大丈夫？」

「問題ない」

栗原愛南は冷笑した。「以前、栗原郁子に抑えられていたのは、おばあさまがいたからよ。今はおばあさまはいないし、私はあなたが思うほど弱くないわ」

彼女は手首を回し、拳を握りしめた。

森川北翔はそれを見て眉を上げ、すぐに雪音を抱き上げて大股で階段を上がっていった。

傍らの紀田杏結は彼らの会話の意味が分からなかったが、井上斉子は理解していた。栗原愛南を見る目がさらに尊敬の念に満ちた。

恩人はやはり恩人だ。どんな面でも、こんなに凄いんだ！

しかし彼女はすぐに一歩前に出て、栗原愛南の横に立ちはだかり、栗原家の二人に向かって言った。「何をしに来たの？」

栗原由奈はすぐに嘲笑って言った。「井上斉子、余計な口出しはしない方がいいわよ。後で手が出たときに、うっかりあなたまで傷つけちゃうかもしれないから！」

井上斉子はすぐに言い返した。「そんなことする勇気があるの？」

「どうして私たちにその勇気がないと思うの？」栗原由奈は嘲笑い、続けて言った。「自分のことを井上家のお姫様だと思ってるの？京都の五大財閥の中で、井上家は下から二番目よ。家柄で言えば、私たちと比べものにならないでしょ？」

井上斉子は一瞬言葉に詰まった。