紀田杏結は不思議そうに井上斉子を見た。「誰なの?」
井上斉子はゴクリと唾を飲み込んだ。
昨日、南條家で森川北翔の機嫌を取ろうと一生懸命だったのに、彼は冷たく、全く口を利いてくれなかった。
紀田杏結に彼のことを話そうとした時、男が冷ややかに彼女を一瞥した。
井上斉子は即座に何も言えなくなった……
紀田杏結は言った。「誰だろうと、若くてイケメンじゃない。こっそり教えるけど、体力もすごくいいわよ。森川北翔みたいな30歳近く上の中年男性よりずっといいわ!しかも彼は再婚の未亡人だし!」
彼女が話せば話すほど、井上斉子は恐れおののき、すぐに弁解した。「実は、実は森川さんもそんなに悪くないんです……」
「ふーん」紀田杏結は彼女を上から下まで見た。「井上さん、もしかして彼に何か下心があるの?前に聞いたけど、ずっと彼と結婚したがってたって……」