栗原愛南は栗原刚弘の後ろについて行きながら、刚弘の行動があまりにも軽率すぎると感じていた。
掌門がすでに都合が悪いと言ったのだから、少し待っても構わないはずだった。
しかし、扉が開いてしまった以上、チャンスを掴みたいと思った。以前、師匠が彼女は武道の才能があると言っていたのだから!
彼女は刚弘の後ろについて部屋に入り、無意識のうちに掌門の方を見た。
すると、ガサガサという音が聞こえ、見てみると掌門は彼らに背を向けていた。明らかに人に会いたくない様子だった。
刚弘は部屋の中を見渡し、突然、雰囲気がおかしいことに気づいた。
床にはティッシュが散らばっており、さらに掌門の声が掠れていたことから……
「掌門、泣いていたんですか?」
鈍感な刚弘は掌門の面子を全く考えなかった。