書斎にて。
紀田亮は懸命に説得していた。「社長、実は彼らを栗原お嬢様との協力に追い込むのは簡単なことです。買収という手段を取る必要はないんです……海外勢力を設立した時、あなたは日本のどの企業にも手を出さないと約束されましたよね。それに国内のこんな小さなものなんて、あなたの目に留まるようなものじゃないはずです。敵を倒すために自分も傷つける必要があるんでしょうか?」
森川北翔は淡々と言った。「森川グループが京都に来て、京都五大名家の均衡は崩れた。木村家を潰せば、森川家が五大名家の一つになれる」
紀田亮は口を尖らせた。「言い訳はやめてください!六大名家でも良いじゃないですか?」
森川北翔はパソコンに目をやり、「五の方が六より響きが良い」と言った。
紀田亮:??
明らかに栗原お嬢様のためじゃないですか!何を言い訳してるんですか!ひどい!
本来ならゆっくりと買収を進めるはずだったのに、今日栗原伯母さんが突然南條家に来て、栗原お嬢様を連れて謝罪に行ったから、社長が焦ったんでしょう!
さらに言葉を続けようとした時、ドアが突然開き、栗原愛南が入ってきた。
森川北翔はさっきまでクールな態度だったのに、彼女が入ってきた瞬間、優しい紳士に変身し、すぐに立ち上がって尋ねた。「どうしてこんなに遅くなったの?今日は疲れた?」
そう言いながら、声が冷たくなり、「木村家に何か嫌がらせをされなかった?」と尋ねた。
栗原愛南は手を振って答えた。「何もありませんでした。今は私に感謝するのに必死で、どうして嫌がらせなんかするはずがありますか?」
森川北翔はその言葉を聞いて少し驚いた。「何?」
栗原愛南は今日一日の出来事を全て説明した。木村知念の玉のペンダントが木村家と関係があるかもしれないと気づいたこと、それから木村雅に尋ねたこと、木村知念に会いに行ったこと、病院の屋上に行ったこと、木村奥様と木村知念が再会したことまで、全てを話した。
最後に、彼女は感慨深げに言った。「木村奥様と木村旭の表情が良くなかったです。そりゃそうですよね。小さい頃から大切に育てた娘や妹が、こんな扱いを受けていたなんて。今頃は後悔で胸が張り裂けそうでしょうね」
森川北翔は「……つまり、木村家との協力は上手くいったということ?」と尋ねた。