栗原愛南は自分がどうしてこうなったのか分からなかった。おそらく溺れる者は藁をも掴むというやつだろう。
斎藤家は権力も金も求めないため、彼女には手の打ちようがないような感じがした。
今やっと斎藤お爺さんの弱みを知ったのだから、試してみないわけにはいかない。
森川北翔も彼女と一緒に立ち上がり、「一緒に行こう」と言った。
栗原愛南が頷いたとき、二人が出かけようとした矢先、斎藤真司からメッセージが届いた:【今、衣装合わせに行くところだ。明日の婚約パーティーに君たちを招待するよ。その時にまた話そう。】
このメッセージを見て、栗原愛南は少し立ち止まった。なぜか、斎藤真司が彼女に対して少し冷たくなったような、意図的に距離を置いているような気がした。
よく考えてみれば、理由は分かった。
明日の斎藤真司と南條真美の婚約パーティーは確実に行われる。南條真美は自分のライバルだから、斎藤真司も婚約者である南條真美に敬意を示さなければならないだろう。
彼女は唇を噛んで、もし早く手を打たなければ、斎藤家というパートナーが完全に南條真美側に立つことになると悟った。
栗原愛南は返信した:【分かりました。明日必ず伺います。】
スマートフォンを置くと、彼女は心配そうな表情を浮かべた。
森川北翔はその様子を見て、すぐに口を開いた:「来るものが来たら対処すればいい。心配するな。」
栗原愛南は頷いて、「シャワーを浴びてくる」と言った。
森川北翔は彼女が浴室に入るのを見て、しばらく沈黙した後、バルコニーに出て紀田亮に電話をかけた。
向こう側の紀田亮はちょうど寝かけていたようで、声がはっきりしない:「社長、こんな遅くに何かありましたか?」
「フランスの勢力に準備させろ。必要ならDNYからも人員を移動させろ。」
紀田亮はこの言葉を聞いて即座に目が覚めた:「何か任務でもあるんですか?」
森川北翔は言った:「斎藤家のすべての財産を調査し、いつでも奪えるように準備しろ。彼らに取って代わる!」
紀田亮は呆然とした:「社長、狂ってますか?斎藤家は前に調べましたよね?彼らはフランスの貴族皇室ですよ。取って代われるわけがない!海外勢力を全部動員しない限り無理です!」
森川北翔はこの言葉を聞いて、目を伏せた。
そうだ。