第548章

橋本南は栗原光雄を一瞥して言った。「当然知ってるわよ!」

栗原光雄が事故に遭って気を失った時、彼女が引っ張り出したのだ。あれだけの力がなければ、できるはずがない!

彼女が目を白黒させようとした時、声が聞こえてきた。「栗原お兄さん、何してるの?」

橋本南が振り向くと、八木珊夏の姿が目に入った。

栗原光雄はすぐに彼女の方へ歩み寄った。「珊夏、来たのか?」

八木珊夏は頷いた。「うん、今日はウェディングドレスの試着に行く約束だったでしょ?」

そう言って、彼女は橋本南の方を見た。

敵意に満ちた目で橋本南を上から下まで値踏みするように見つめ、冷ややかに笑って、まるで所有権を主張するかのように栗原光雄の腕に手を回した。

さっきまで近づく前から、栗原光雄が橋本南と話しているのを見ていた。栗原光雄が彼女と話す時の優しい表情は、自分と一緒にいる時とは少し違っていた。