栗原愛南は即座に浴室の方へ駆け出した。
栗原光雄はまだ躊躇していたが、すぐに言った。「あぁ、妹、橋本南は入浴中だから、逃げてないよ。見に行かなくても...」
その言葉が終わるか終わらないかのうちに、浴室のドアが栗原愛南に蹴り開けられ、中から驚きの声が聞こえた。
八木珊夏が叫んだ。「妹さん、何をするの?!」
栗原光雄は一瞬固まった。「珊夏?」
彼が浴室に入ると、八木珊夏と家政婦が浴室に立っているのが見えた。彼は驚いて言った。「どうしてここに?橋本南は?」
その言葉を言い終わった時、やっと浴槽の中で水に沈められている橋本南の姿が目に入った!!
栗原光雄と栗原愛南は同時に叫び声を上げ、すぐに前に出て橋本南を引き上げようとしたが、次の瞬間、「ゴボゴボ」という音が聞こえてきた。
二人が固まる中、浴槽の水が下に流れ出し、橋本南の頭が露わになった......
時間を1分前に戻す。
橋本南は八木珊夏に強く押さえつけられ、全く力が出せなかった。彼女はすでに死神が手招きしているのを見ていた......
彼女はもう諦めかけていたが、その時、浴槽の底が目に入った。それは白くぼんやりとしていて、まるで天国のよう......
天国に栓があるはずがない?
違う、これは浴槽の排水口だ!
橋本南は即座に何かを悟った。もう抵抗するのをやめ、残された力を振り絞って腕を上げ、ゆっくりとその排水口に手を伸ばした。
そして、ついに栓を掴み、思い切り引っ張った......
「ゴボゴボ」
浴槽の水が音を立て、大量の水が排水口から流れ出していった......
すぐに八木珊夏と家政婦の驚きの声が聞こえた......
彼らは蛇口をひねろうとしたが、もう遅かった。
注水には時間がかかるが、排水の方が早い。すぐに彼女の頭が現れ、全身びしょ濡れのまま浴槽に横たわっていた。
栗原光雄は駆け寄り、すぐに彼女の腕を掴んだ。
橋本南は息も絶え絶えで、口から水を吐き続けていた。どれだけ水を飲んでしまったのか分からない。彼女は浴槽の中で完全に力なく、動くこともできなかった。
栗原愛南は橋本南の前に駆け寄り、腹部を押して溜まった水を全て出させた後、八木珊夏と家政婦の方を向いた。
栗原愛南は厳しい声で尋ねた。「どういうこと?何をしていたの?!」