第610章

栗原愛南の叫び声とともに、ソファーで居眠りをしていた家庭医が急に体を起こし、慌てて振り向いた。

栗原叔父さんの寝室のドアが開き、徹夜で付き添っていた栗原井池と栗原刚弘が飛び込んできた。

その物音を聞いたのか、栗原叔父さんたちや栗原家の他の兄弟たちも、次々とやってきた。

これは彼らが交代で休んでいたとはいえ、実は深く眠れず、ずっとこちらの様子を気にかけていたことを示していた。

しかし栗原愛南はそれらに気付かず、彼女の注意は全て栗原叔父さんが床に吐いた黒い血に向けられていた!

栗原愛南の顔は紙のように真っ白になった。

彼女は栗原叔父さんを見つめた。そこに横たわる父は生気を失ったように見え、彼女の足はガクガクと震えていた……

まさか、あの解毒薬も間違いだったの……

狐は彼女の想像以上に深く立ち回っていた?