第660章

森川家に何かあったようで、正門が開いており、数台の車が駐車場に堂々と停まっていた。

栗原愛南の車が到着すると、門番は彼女を見て少し慌てた様子で、ぎこちなく尋ねた。「栗原お嬢様？どうしていらっしゃったんですか？」

栗原愛南は不思議に思った。「来てはいけないの？」

「いいえ、そうではなくて...その...私は...」

栗原愛南：「門を開けて。」

前回、森川家のパーティーに参加した時に既に顔を見せており、その時森川北翔は門番に、彼女が来たら止めないようにと伝えていた。

門番は大門を開けながら、咳払いをして言った。「あの、今日は森川麻理亜様がお帰りになられました。」

森川麻理亜？

森川家本家の私生児の娘？

以前、森川辰は森川麻理亜の存在により、私生児に偏見を持っていた。そして海浜市にいた時、森川麻理亜はたった一手で紀田葵可を差し向け、栗原愛南と森川北翔の離婚を引き起こすところだった。

その後、栗原愛南は愛南として生きることになり...

森川北翔も妻を失った夫となり、その後彼女は京都に嫁いだと聞いたが、詳しいことは分からなかった。

あの時、森川麻理亜は木村家の遠縁と一緒にいたのではなかったか？

その木村家の男性はノラ研究所に勤めていたが、栗原愛南に研究所の薬物の密売を暴かれた後、すぐに投獄された。

森川麻理亜はその後誰と結婚したのだろう？

栗原愛南は気にしていなかったが、この実家訪問の様子を見ると、かなり良い相手と結婚したようだ。

しかし、それにしても門番の彼女を見る目がおかしいのではないか？

栗原愛南は疑問に思って尋ねた。「彼女以外に、誰か来ているの？」

「はい...」門番はもごもごと言った。「彼女の親友の江口雪様もいらっしゃいます。」

江口雪？

栗原愛南は一瞬止まった。この名前にどこか覚えがある。

考えている時、突然車の後部座席から声が聞こえてきた。「あの慈善家の江口雪さんのこと？」

栗原愛南が急いで振り返ると、斎藤愛南がいつの間にか彼女の車の後部座席に座っており、瓜子の袋を抱えながら食べ、まるで面白い話を聞いているかのような表情で彼らを見ていた。

栗原愛南：「なぜここにいるの？」