墨野宙は多くのドレスを用意させ、そのうちの1つを自ら天野奈々のために選んだ。それは花柄の金属繊維のストラップレスドレスで、白い下地に東洋を象徴する水墨画のような花柄がプリントされていた。濃厚な東洋の色彩を帯びているため、天野奈々が着ると、アジアの美人の古典的な気品が引き立つ。天野奈々のくびれた細い腰と真っ直ぐで白い長い脚…彼女の愛らしさ、彼女の魅力が、この瞬間、まるで香りが空気中に広がるように溢れ出した。
墨野宙は天野奈々の後ろに立ち、自分の胸で彼女の背中にぴったりと寄り添い、両手で彼女の細い腰を抱きしめ、離したくない様子で言った。「君はまるで芸術品のようだ」
「それは、あなたの目が良いからよ」天野奈々は褒めた。彼女は本当に、墨野宙がここまで彼女のことを理解しているとは知らなかった。Secretが東洋トレンドの撮影をすることも、Secretの人々が彼女を新人だと侮辱したことも知っていた。だから、墨野宙はわざとこのようなドレスを選んだのだ。Secretに、天野奈々を選ばないのはどれほど大きな損失かを見せつけるために。
「なぜ君はモデルにならなければならないんだ。本当に君を隠してしまいたい」墨野宙は天野奈々の肩に顎を乗せて、少し不満げに言った。
「じゃあ、なぜ冬島雪があなたを見ただけで狂ったようになるとは言わないの?」天野奈々はすぐに反撃した。そして、笑いながら言った。「大丈夫よ、私たちは互いにしか触れ合えないんでしょう?」
「そうだな」そう言うと、墨野宙は天野奈々を振り向かせ、彼女の唇にキスをした。二人は鏡の前で熱烈に絡み合い、天野奈々は鏡越しに自分の表情を見ることができた。墨野宙のキスは本当に心地よく、優しくても情熱的でも、彼の唇は彼女一人だけのものだった。もし他の女性が墨野宙にキスしたら、彼女の心は、考えただけで不快になった。
「もういいわ、遅刻しそう」天野奈々は頬を赤らめて墨野宙を押しのけた。
「家に帰ったら、倍返しで補償してもらうぞ」墨野宙は優しく彼女を放した。
天野奈々は頷き、墨野宙の耳たぶにキスをした。「何でも補償するわ…」