第321章 天野奈々と墨野宙は離れない

山本豪の結婚式の二日前の夜、深水藍華は天野奈々を誘って一緒に夕食を食べに出かけた。本来は家族を連れずに、姉妹だけで二人の世界を過ごすつもりだったが、山本修治が深水藍華のパパラッチ回避能力を疑っていたため、本能的に深水藍華の後ろについて行った。

五つ星ホテルの最上階から、街の灯りと屋外の夜景を見渡すことができた。

天野奈々と墨野宙が先に到着したが、墨野宙はトイレに行った。その後、深水藍華が満面の笑みで前を歩いてきた。黒いコートを着ていて、おそらく結婚式が近いせいか、化粧をしていない頬には常に薄い赤みがさしていた。現れた瞬間からずっと消えることはなかった。山本修治は彼女の後ろを歩き、妻を守るような警戒心のある様子で、見ていると少し滑稽な感じがした。

「墨野社長は?一人で来たの?」