第417章 あなただけが彼に近づける

翌朝、墨野宙は海輝で仕事をしていると、陸野徹が突然ドアをノックして入り、墨野宙の耳元で何かを囁いた。

墨野宙はダイヤモンド万年筆を置き、数秒間呆然としてから、笑みを浮かべた。「彼が何をしたいのか、見なかったことにしておけばいい……」

「でも……もし前会長が奥様を困らせたら」

「俺の妻が対処できないと思うのか?」墨野宙は顔を上げ、真剣な眼差しで陸野徹を見つめた。

陸野徹は慌てて首を振った。「ただ奥様が辛い思いをするのが心配で」

「あの老いぼれは、まだ十年前に海輝を去った時と同じだと思っているのか?あんなに大げさに、まるで暴力団の出行みたいに、帰って来たことを知らせたがって」墨野宙は思わず首を振った。「他のことは気にするな。ただ、彼の安全には常に注意を払うように……」