第418章 言っておくけど、芸は売るけど身は売らないわ!

「本当に故意じゃなかったんです……」冬島香は慌てて頭を下げて謝罪した。

「いいわ、やなぎくん、私と一緒に着替えに行きましょう。彼女の名前を控えておいて、実費で弁償してもらえばいいわ。あまり追い詰めないで」よしさんと呼ばれる女性は優しく言った。一見、相手の過ちを理解しているように見えたが、実際には少しも容赦する気はなかった。

実費で弁償!

このような服は、冬島香の給料では、何十年働いても一着買えるものではなかった。

冬島香の顔が一瞬で真っ青になった。「お洗濯させていただきます……」

「洗濯?あなたが洗ってシワシワになった服を私たちのよしさんに着せるの?どこの会社の人?責任者を呼んでもらえる?ホテルのスタッフなの?」相手は冬島香の身分を全く知らなかった。もちろん、このような状況で責任者を呼ぶのは当然のことだった。

冬島香は絶望的な表情で群衆の中の北川東吾を見た。気付いていないと思っていたが、すぐに北川東吾が歩み寄り、冬島香の傍に立った。

一方、見物していた天野奈々も安心して見続けていた。

「何があったんだ?」

相手は北川東吾が話しかけてきたのを見て、すぐに笑顔を浮かべて言った。「あら、ひがしさんですか。このスタッフが、よしさんのドレスを汚してしまって、今対応しているところなんです。ご心配ありがとうございます」

「誰がお前を心配してるんだ?」北川東吾は冷たく言い放ち、続いて冬島香に向かって尋ねた。「話してみろ」

「誰かがあなたにお酒を注いでいるのを見て、急いで止めに行こうとしたら、よしさんにぶつかってしまって。よしさんは実費で弁償すればいいと仰ったんですが……」お金なんてないのに、と冬島香は後半を飲み込んだ。

相手は表情を固くし、北川東吾と冬島香の関係を知りたがっていた。

しかし、相手の予想外のことに、北川東吾は手に持っていたグラスの酒を相手に直接かけ、そして言った。「俺の人間をいじめるのは好きじゃない。この金は俺が払う。だからこのドレスは今、俺のものだな?なら俺の好きにできるってことだ……」

「ひ……ひがしさん」相手は驚きのあまり言葉を失った。