午前10時、墨野宙はスイスの代表団を海輝の近くのホテルに案内した。代表団は男性3人、女性2人で、今回の行程に対してかなり不満そうな態度を見せていた。
「天野家との提携案は既に避けられたはずだ。今や天野家の責任者は行方不明で、提携など進められるはずがない。我々との提携を望むブランドはいくらでもあるのに、なぜボスは我々を東京に来させたんだ?」代表の一人がソファに座りながら理解に苦しんでいた。
「お前だけじゃないさ。この鬼のような場所に来て、空気まで汚染されている。」
「我慢しよう。相手と一度会って帰るだけだ。」
一同身支度を整え、ホテルのスタッフの案内で宴会場へ向かった。しかし、到着してみると、広々とした食卓には海輝の責任者も天野奈々の姿もなかった。
「どういうことだ?天野家の代表はなぜ来ていない?」