第899話 この局面は、彼女がすでに仕組んでいた

「天野奈々はきっと私のために最高の道を用意してくれるはずよ。彼女はそういう素晴らしい人だから」夏目栞は少しも疑わなかった。「それに、今回は正義のためだもの」

田村青流は彼女の自信に満ちた様子を見て、笑みを浮かべた。「今は二人とも失業中だし、夏目さんを食事に誘ってもいいですか?」

夏目栞はもちろん頷いた。

二人は人目につきにくいレストランを選んで食事することにしたが、夏目栞が席に着いたばかりのとき、近くにいた2歳くらいの子供が噴水に落ちてしまった。水は深くなかったものの、子供は大声で泣き出してしまった。

夏目栞が見ていると、田村青流がすぐさま駆け寄って、子供を引き上げた。その後、セレブ風の女性が慌てて駆けつけてきた。

「あかちゃん、大丈夫?」

田村青流は相手を見つめ、初めて怒りの色を浮かべた。「子供はまだ小さいですから、目を離さないようにした方がいいですよ」