第898話 お前はクビだ!

撮影以外にも、彼は深夜に書斎で重要な書類に目を通さなければならなかった。多くの権限を委譲したとはいえ、最も重要なものは自分の手中に収めておく必要があった。そうでなければ、海輝の株主たちが真っ先に反対するだろう。

ケイサーは全くチャンスを掴めなかったが、台本にベッドシーンがあることを覚えていた。

そう、彼女はその日が来るのを待っていた。

……

すぐに、権守家の騒動が広まった。権守夜の結婚逃亡により、権守家は一夜にして株価が暴落し、名声も傷つけられた。今回は相当なダメージを受けることになりそうだった。

田村青流の件も大きな話題となり、この頃の東京は本当に賑やかで、毎日面白い「ドラマ」が見られた。

夏目栞は次回の収録の通知を受けたが、相手と協力する気が全くなかった。しかし、《大冒険》から抜ける適当な口実や理由が見つからなかった。結局のところ、天野奈々は彼女に多くの努力を注いでおり、軽々しく天野奈々を失望させたくなかった。

すぐに局内で会議の通知があったが、皆が田村青流を避けていた。なぜなら、新しい上司が来れば部下も変わるものだし、下の職員たちがどれほど不満があっても、局長の息子に逆らうわけにはいかなかったからだ。

「皆さんもご存知の通り、次回の《大冒険》は私が司会を務めることになりました。ここで、私の経歴を少し紹介させていただきます」局長の息子は壇上で、海外での様々な受賞歴について延々と語り続けた……

「私の指揮の下で、皆さんと共に《大冒険》の輝かしい歴史を継続できると確信しています」

どこからそんな自信が出てくるの?

夏目栞は心の中で問いかけた。

「栞さん、私を信用していないんですか?」相手も夏目栞の興味のなさを察したのか、彼女の名前を呼んで尋ねた。

夏目栞は軽く笑って、首を振った。「続けてください」

「正直に言って、田村さんのやり方は古くなっています。今は若者の時代です。高視聴率を維持するには、新しいものを打ち出す必要があります。だから、《大冒険》の次回は変更があり、新しい面白いコーナーを追加します」

バラエティ番組を、何の宣伝もなしに、こんな突然にコーナーを変更する?

新旧の司会者の引き継ぎもなく、これは明らかに自滅への道だ。局長は本当に頭がおかしくなったのだろうか?