テレビ局の会議は、最近起きた出来事に対して、番組の調整を行うためのものだった。
その中で当然『大冒険』の編成も含まれており、田村青流はそれに対して万全の準備をしていた。番組に戻った後、ライバル局への転職をどう説明するか、すべてを上手く処理できると考えていた。
おそらく他の人々も、『大冒険』はいずれ彼の手に戻るだろうと思っていたが、その番組の司会者について話が及んだとき、局長は田村青流を一瞥もせず、別の番組の司会者に直接言った。「『大冒険』は以前あなたも司会経験がありますよね。今こそあなたの力が必要な時です...」
局長の言葉を聞いて、全員が驚いた。
ほとんどの人が田村青流に視線を向けた。なぜ、予想と違うのか?
さらに重要なことに、会議全体を通して、局長は田村青流と夏目栞について一切触れなかった。まるで二人が存在しないかのようだった。
田村青流は表面上は平静を装っていたが、心の中では分かっていた。この老いぼれは意図的に彼に嫌がらせをしているのだ。だからこそ、これほど大勢の前で、かつてのテレビ局のエース司会者である彼を辱めているのだと。
「あの...田村さんの前で、私では申し訳ないのですが...」相手は局長を見ながら困ったように言った。
「田村青流には別の予定がある」局長は微笑みながら答えた。
「それならば、この重責を引き受けさせていただきます」
全員が、局長は田村青流に『大冒険』より良い仕事を与えるだろうと思っていたが、『大冒険』の件を話し終えた後、局長はようやく田村青流に言った。「会議が終わったら残っていなさい。個人的に話がある」
すぐに会議は終わり、人々は席を立って退室し、会議室には田村青流と夏目栞だけが残り、局長の指示を待った。
「田村君、最近さくらちゃんの所で手が足りないんだ。夏目栞が適任だと思うので、そちらに移ってもらおう」局長は二人に言った。
田村青流は何も言わず、夏目栞は自分がどんな仕事に配属されるのか全く分からなかった。
「君については、ライバル局に行っていた経緯もあるし、今『大冒険』を任せるのは適切ではない。だから、こういう時期は別の仕事をしてもらって、タイミングを待つ。最近の騒動が落ち着いたら、また『大冒険』を任せよう」