第918章 田村青流は災難に遭うのか?

「もちろん、誰かが私をいじめてきたら、どんな代償を払っても、その結果を思い知らせてやる……」

「自分も代償を払うことになるのを恐れないの?」

「死ぬなら、奴が先に死ねばいい」

「分かった。では、よろしく頼む」おぼっちゃまは天野奈々に左手を差し出した。

この会話の全過程で、真相や手の問題には一切触れなかった。これに中村さんは目を丸くした。こんな交渉の仕方もあるのかと。

実際、二人は話し合いの中で、お互いの意図を理解していた。

天野奈々は明確に表現した。彼女は積極的に事を起こすことはない。これは彼女の対外的な処理方法と一貫性を保っていた。だからこそ、田村青流と比べて、おぼっちゃまは天野奈々をより信用したいと思った。彼は確かに軽率に見えたが、田村青流と比べると、高貴な出自を持っていた。その誇りゆえに、彼は田村青流を弄ぶことにより興味を持っていた。

「それで、あのおぼっちゃまは一体何が言いたかったの?あなたたちの会話、一言も理解できなかったわ」帰り道で、中村さんは天野奈々に尋ねた。「結局、誰を信用しているの?」

「面白いことになるわよ」天野奈々は中村さんに言った。「おぼっちゃまが誰を信用するにしても、まず田村青流を十分に苦しめるでしょう。そうなれば、当然私と敵対するはずがない。そうでなければ自分で自分を苦しめることになるから」

「つまり、田村青流が災難に遭うってこと?」

「そういうことね」

実際、田村青流もおぼっちゃまに対して自信が持てなかったが、自分の計算が太子の信頼を得られると確信していた。確かに、おぼっちゃまは天野奈々に会った後、ただ天野奈々が演技過ぎると罵っただけだった。

「あの女は、やはり全てをお前のせいにして、私にお前を追い詰めさせようとした。でも私はそうはしない」おぼっちゃまは田村青流に言った。「お前が夏目栞を連れて戻ってきたのは、私が天野奈々を苦しめたいからだ」

田村青流は密かに口角を上げ、自分の計算が成功したと思った:「ご安心ください。今は夏目栞を連れていますから、『大冒険』を新たな高みに引き上げる自信があります」

「頑張れよ」おぼっちゃまは何も約束せず、ただ笑って田村青流の肩を叩いただけだった。二人は表面上、和解したように見えた。