第920章 お前の来た所へ、帰れ!

田村青流は今、テレビ局に弄ばれているような状況にあったが、抵抗する術もなかった。天野奈々を怒らせてしまった以上、他に行き場所がないからだ。

夏目栞は田村青流を助けたかったが、携帯を取り出しても、助けを求められる人が見つからなかった。元々すべてはスーパースターが与えてくれたものだった。今は、ただ原点に戻っただけだ。

スーパースターを離れた後、彼女は本当に何者でもなくなっていた。

だから、田村青流が部屋に閉じこもる姿を見守ることしかできず、一人でリビングで悲しんでいた。

そう考えた夏目栞は、田村青流のために何かしなければならないと思い、翌日、局長の執務室に突入した。

局長の秘書は止められず、局長は秘書に退出するよう命じた。

「なぜ田村青流を苦しめるのですか?彼には何の落ち度もないし、才能もあるのに、ニュース取材なんかに埋もれさせるべきではありません。」

「夏目栞、この執務室に入ってきた以上、今日の結果は覚悟しておけ。君もよくわかっているはずだ」局長は万年筆を置き、夏目栞を見つめながら言った。「はっきり言おう。君も田村青流も、自分を買いかぶりすぎている。」

「この世の中に当たり前なんてものはない。君が田村青流をどう思おうと、それは君の個人的な考えに過ぎない。」

「君が彼に非がないと思っても、本当に非がないとは限らない。」

「出て行け。今日の君の行動のせいで、田村青流は笑い者になるぞ。」

「それに、どうせラジオのパーソナリティーになりたくないんだろう。なら、うちの小さな寺には君という大仏は必要ない。」

「来た道を帰れ……」

夏目栞がテレビ局で大騒ぎを起こしたことは、すぐに誰もが知るところとなった。もちろん、田村青流にも伝わった。

田村青流はそれを聞いて、恥ずかしさで顔が真っ赤になった。なぜ夏目栞はいつもこんなに感情的になるのか?

そのため、夏目栞が家に入るなり、田村青流は考えることもなく、すぐに平手打ちを食らわせた。「お前のやったことを見てみろ!」

局内の仕事用グループチャットでは、この件が完全に広まり、みんな田村青流がこんな状況に追い込まれたことを笑っていた。

夏目栞は呆然としていた。田村青流が自分を殴るなんて、まったく予想していなかったからだ。