高木朝子は吉田蘭の性格が急に変わった理由は分からなかったが、この時の彼女は誰かが困っているのを見て喜んでいた。
琴子は吉田蘭の目に善意が一切ないのを見て、胸が痛く締め付けられた。
このお姑さんは、以前のではなくなっていた。
吉田蘭は彼女を見ることをやめて、にこやかに朝子の手を軽く叩きながら言った。「あなたと正広がもうすぐ婚約するのね。何か必要なものがあったら、遠慮なく私に言ってね。」
正広?
高木朝子は急に顔を上げ、信じられない表情を浮かべた。
朝子は正広はもう亡くなったと言おうとしたが、吉田蘭の顔の優しさと手の温もりが名残惜しそうである。
彼女は吉田蘭に真実を告げるべきか迷っていた。
琴子はこの時になってやっと、吉田蘭の記憶が混乱になったことを分かった。
彼女はすぐに医者を呼びに行こうと振り向いた時、誰かの胸に突っ込んでしまった。
馴染みの香りが鼻腔を満たし、彼女が呆然としている瞬間、目の前の人は彼女を突き飛ばした。
山本正博の冷たい顔から感情が読み取れなかったが、彼女と目が合った一瞬、瞳が曇った。
その時、吉田蘭の嬉しそうな声が響いた
「正広、来てくれたのね?」
山本正博は濃い眉をしかめた。
琴子は小声で言った。「お母さんの記憶が混乱になっています。」
そう言うと、大股で部屋を出て行った。出て行く時、琴子は後ろを振り返った。
お姑さんは心から大笑っていた。それは彼女が見たことのない様子だった。
お姑さんの心の結びは、ずっと山本家の長男、山本正広だったのだ。
医者は検査を終えて、彼らを脇に呼んでいた。
「患者さんの記憶が混乱になりました。このような症状は珍しくて、他の病気のせいで否定できません。」
「記憶はいつ戻れますか?」山本正博が尋ねた。
医者が答える前に、高木朝子が割り込んだ。「なぜ戻す必要があるんですか?」
「正博兄さん、伯母さんは今の状態でとても幸せそうじゃないですか?本当に記憶を戻せば、もう一度辛いを味わせたいんですか?」
一時、雰囲気が重くなった。