そのとき、医者は突然琴子の方を見て、「そういえば、君は666号室の山本さんの家族でしたよね。彼女の結果も出ました。」
彼は隣の診察室に足早に入り、診断書を取り出して琴子に渡した。
琴子が「悪性腫瘍」という文字を見たとき、眉をひそめ、心が重く沈んだ。
彼女は結果を持って山本正博の病室へ向かった。正博はすでに目を覚ましていたが、顔色は少し青白かった。
琴子が診断書を握りしめていると、山本正博は彼女を見て言った。「見せてください。僕は耐えられるよ。」
結果は予想していたものの、診断書を読んだ後、彼は長い間黙り込んでしまった。
琴子は慰めの言葉をかけようとしたが、どこから始めればいいのか分からなかった。
他人の苦しみを知らずに、他人を諭すことなかれ。まして彼女は既にそれを経験していたのだから。