高橋進は彼女に会いたい

箱の中にはもう一通の手紙があり、当時祖母が彼女を拾った時の様子が書かれていた。

祖母は学歴が高くないが、彼女のプライバシーを守るため、誰かに代筆を頼むことはせず、一字一句辞書を引きながら、彼女を拾った時の細かい状況を詳しく描写していた。

おそらく自分がいなくなることを予想していたのか、祖母は当時のすべての情報を残すために全力を尽くしていた。

これらはすべて祖母の心血だった。

琴子は震える手でハンカチを箱に戻し、心を落ち着かせてから、箱を抱えて外に出た。

正午の日差しが眩しく、初秋の空気もまだ蒸し暑かった。

琴子が携帯でナビを検索しようとしたとき、高橋謙一からのメッセージを見た「時間ある?父さんが会いたいって。」

高橋謙一は嬉しそうで、その文章の後ろには絵文字がたくさん並んでいた。

高橋進が彼女に会いたい?

琴子は眉をひそめ、高橋謙一が高橋進に何を話したのか、なぜ自分に会いたがっているのか分からなかった。

でも彼女は高橋忠一に、高橋謙一から距離を置くと約束したのだ。

どんな理由で断ればいいだろう…

琴子が携帯を持ちながら考え込んでいると、顔を上げた瞬間、黒いスーツを着た数人の男性とぶつかりそうになった。

黒いスーツの男たちは彼女が出てくるのを見て、急いで近づいてきた。

「池村さんですか?」話しかけてきた男はサングラスをかけ、腕をむき出しにして筋肉質な体格を見せていた。「うちの社長が池村さんを誘いたいそうです。」

社長?

琴子は彼らを観察した。この数人は大柄で屈強な体格で、ボディーガードのような人物に見えた。

社長という言葉を聞いて、琴子の頭にすぐに高橋進が浮かんだ。

琴子が断ろうとすると、このボディーガードたちはすぐに案内するような仕草をし、表情は厳しく、目つきは凶暴だった。

まるで彼女が断りの言葉を口にしたら、すぐにでも彼女を連れ去りそうな雰囲気だった。

「池村さん、心配なさらないでください。社長はただお茶を飲みながらお話がしたいだけです。他意はありません。」