山本家は君を守れない

ニキビだらけの男の顔には、目尻から鼻筋にかけて恐ろしい傷跡があり、サングラスをかけているときは分かりにくかったが、外すと一目瞭然だった。

彼が笑うと、その傷跡がより目立ち、陰険で狡猾な印象を与えた。

「池村さんはなぜ高橋進との約束だと思ったんですか？」

高橋進がどんな人物で、なぜわざと彼女を誘うのか。

男は不気味な笑みを浮かべながら言った。「我々の高木社長が君に会いたがっているんです。」

高木社長って、高木財源？

その名前を聞いて、琴子は眉をひそめ、胸に不吉な予感が込み上げてきた。

高木家は裕福な家柄だが、高木財源についての噂も多かった。

高木財源は白手から身を起こし、人生の半ばを過ぎて、何度も刑務所に入っていたという。

この件は否定されたものの、高木財源の手法は残虐なことで有名だった。

最も有名な事件は、高木朝子が幼い頃、ある男子生徒に告白されたことがあり、その後その少年は両手を切断され、高木財源は金で簡単に解決したというものだった。

それ以来、誰も高木朝子に手出しをする者はいなくなった。

このような例と手法は高木家では日常茶飯事となっていた。

いずれ高木家と対峙することになるとは思っていたが、今はまだその時ではない。

「申し訳ありませんが、用事がありますので、今日は高木社長との約束を失礼させていただきます」池村琴子は笑顔で断ったが、車内の誰も彼女の言葉を聞き入れなかった。

すぐに目的地に到着した。

市内から離れた別荘だった。

四方を山に囲まれ、一見環境は良好だが、中で何が起きても誰も知ることはない。

車がゆっくりと別荘に入っていき、琴子は携帯を取り出したが、この場所に入ると圏外になっていた。

携帯には高橋謙一と山本正博からのメッセージが届いていた。

開いて確認すると、どこにいるのかを尋ねる内容だったが、今は返信することができない。

車を降りると、二人のボディーガードが彼女の両側にぴったりとつき、前に進むよう強要した。