高木朝子だ!
琴子は目を細めて、高木朝子がここに来るとは思わなかった。
「勝雄、彼女に手を付けてないで!早く開けなさい!」
高木朝子の話を聞いて、琴子は意味深に唇を歪めた。
これは一体どう言うことだろう。
まさか本当に自分を助けに来たというわけではないだろう?
田中勝雄も、高木朝子が池村琴子を放させるためにここに来たとは思わなかった。
彼はドアの近くに立っている仲間に目配せをし、その男は何も言わずにドアを開けた。
高木朝子は息を切らしながら中に駆け込み、池村琴子が無事なのを見て、心の中は複雑で、落胆なのか安堵なのか言い表せなかった。
「お嬢さん、なぜここに来るの?」田中勝雄の声は柔らかく、目の周りの恐ろしい傷跡さえも、そこまで恐ろしく見えなくなった。