協力は話し合う余地がなし

女性として、琴子は、この値踏みするような視線が決して友好的なものではないことを知っていた。

しかし、今日一日の出来事を経験した後で、もう推測する気力も残っていなかった。

彼女は高橋謙一の服を引っ張って、彼が振り返ると、彼女の表情に疲れが見えた。今日の一連の事を思い出し、すぐにその理由を察した。

彼女は一日中驚かされ、疲れ果てていた。

「先に送って行くよ」高橋謙一は部屋の中の他人の視線など気にせず、琴子を連れて出た。

玄関に着いて、琴子は彼と距離を置くように数歩後ずさりした。「高橋さん、あなたのお父さんが私に会いたいと言って、もう会えたでしょう。私のためにしてくれたことも終わったわ。これから、私たちはこんなに近づく必要はないと思うの」

高橋姉帰の彼女への呼び方が気まずかった。

そして、自分は正しいことをやっているので恐れることはないと思っていたが、他人はそうは考えないかもしれないと気付かされた。

それに、高橋忠一とは、謙一から距離を置くことを約束したのだから。

彼女の決然とした態度を聞いて、高橋謙一は怒るどころか、むしろ彼女をより一層好ましく思った。

他の女性なら、彼と何か関係を持ちたがるところだが、琴子のこの態度は、むしろ本当に彼を友人として見ているからこそだった。

高橋謙一は彼女を妹として認めたいという思いを打ち明けるべきか迷っていた。

明日には結果が分かると思うと、その言葉を飲み込んだ。

もし明日の結果が良ければ、琴子は彼の実の妹となる。もしそうでなくても、彼は彼女を妹のように扱い、誰にも彼女を傷つけさせないつもりだった。

「君の心配はわかった。今後は君の言う通りにしよう」高橋謙一は口角を上げた。どうせ明日には結果が出るのだから。

二人は家の前に立ち、頭上の明かりが二人の周りに金色の輪を描いていた。

遠くから見ると、美男美女で、まるで芸能人のようなお似合いのカップルに見えた。

高木朝子は車から降りると、すぐに玄関にいる謙一と琴子の姿を目にした。