その言葉を言い終えると、彼は高橋敬一を見つめ、重々しい声で言った。「監視カメラの映像を出してくれ。見せてもらおう」
高橋敬一は黙り込み、高橋姉帰も青ざめた顔をしていた。
「お父さん…」
二人の反応を見て、高橋進は心の中の推測がより確かなものとなり、ひどく不機嫌な表情を浮かべた。「馬鹿な真似を!お前たちは自分が何者だと思っているんだ?事実を無視して人を陥れるなんて、私がそんな教育をしたか?」
池村琴子は興味深そうに高橋進を見つめていた。
さっきまでは高橋家の人々は皆同じ穴の狢だと思っていたが、まさか高橋進が自分の味方をしてくれるとは。
高橋進が怒っているのを見て、高橋姉帰は目を潤ませた。「お父さん、兄さんを責めないで。私が頼んだことなの」
彼女は慌てて涙を拭い、涙の粒が頬を伝って落ちていった。
正体を見破られた高橋敬一はかえって楽になったように、池村琴子の前に立ち止まった。「池村さん、監視カメラの件は私の過ちです。妹の代わりに謝罪させていただきます。どうか彼女をお許しください」
池村琴子が高橋姉帰を見ると、彼女の顔には謝意は見られず、むしろ不服そうな表情を浮かべていた。
許すか許さないかに関係なく、高橋姉帰は心から謝罪することはないだろう。
高橋謙一にこんな妹がいることを思うと、彼のために冷や汗をかいてしまう。
彼女は自分の箱を軽く持ち上げ、口角を少し上げた。「許すも許さないもありません。高橋さんが今後二度と人のプライバシーを覗き見ることがないことを願います」
彼女が箱を抱えて振り返ったとき、慌てて入ってきた使用人と正面衝突してしまった。
池村琴子の箱は床に落ちた。
「お嬢さん、外に森田という名前のお嬢さんがお待ちです」
メイドの話を聞いて、その場にいた全員が立ち上がった。特に高橋進は急いで言った。「早く、お通ししなさい」
興奮する高橋家族を見ながら、琴子は床に落ちたものを箱に戻し、振り返ることなく箱を抱えて立ち去った。
「仙」という言葉を耳にしたとき、思わずその森田さんを何度か見つめてしまった。