俺の良いところは何だ

山本正博はこの話題を続けず、麺を箸で持ち上げて一口食べて、その動作はいつものように優雅だった。

唐辛子を加えた麺は確かに違っていた。熱気が立ち上り、彼の目が少し潤んでしまった。

麺を食べ終わると、池村琴子は自ら茶を差し出した。

山本正博はそれを受け取り、本当にゆっくりと茶を味わい始めた。

10分後…

琴子は時間を確認した。この時間なら区役所の職員は出勤しているはずだ。動かない山本正博を見ながら、もう少し遅くなると区役所の職員が帰ってしまうと注意すべきか迷っていた。

山本正博は彼女が落ち着かない様子を見て、意味深な笑みを浮かべた。

そのとき、彼女の携帯電話が鳴った。

高橋謙一からだと分かり、彼女は躊躇なく電話を切った。

高橋家族と距離を置くことを決めたのだから、これからは連絡を取らない方がいい。