自分を責める必要はない

「敬一、落ち着いて!」高橋忠一は慌てて彼を引き止めた。「これは事故だ。誰も望んでいなかったことだ」

もう一つの手が重なり、高橋敬一の手を掴んで強引に引き離した。

山本正博だった。

彼は冷たい表情で、池村琴子を自分の後ろに庇い、眉をひそめ、端正な顔を曇らせて言った。「謙一の事故は彼女とは関係ない。彼女はその時彼の車に乗っていなかった」

高橋敬一は冷ややかに鼻を鳴らし、池村琴子を睨みつけると、急いで救急室の前へ向かった。

高橋忠一は山本正博を見て申し訳なさそうに言った。「すみません。弟の性格が荒っぽくて」

山本正博は軽く頷き、振り返って池村琴子を見た。

彼女は目が真っ赤になるまで泣いていた。

以前、祖母が亡くなった時は高木朝子を恨むことができたが、今回の高橋謙一の事故では、自分を責めることしかできなかった。