第68章 お邪魔しました

池村琴子は大声で叫びながら、わざと手でドアを叩いていた。

今、彼女の頭の中にはただ一つの信念があった。高木朝子と山本正博の甘い夜を台無しにすることだ。

今回のことは、後で山本正博が怒り出しても、アシスタントのせいにできる。

池村琴子は「ふふ」と笑い出したが、ドアが開いたことに気付かなかった。

ドアを開けた人を見て。

彼女の笑顔は一瞬で凍りついた。

目が合い、互いの目に狼狽の色が見えた。

「なぜ来た?」山本正博は鷹のような目を細めた。

「正博兄さん、誰が来たの?」高木朝子は服装が乱れたまま近づいてきて、池村琴子を見ると、小さな口を手で覆い、顔を赤らめながら後ろに隠れた。「池村さん、こんな夜遅くに、何しに来たんですか?」

高木朝子の声には怒りと非難の色が混ざっていた。