池村琴子は彼女が食べたばかりの菓子を見つめた。甘そうに見えたが、実際には中に梅干し菜と肉が入っていた。外はサクサクしているのに、中に梅干し菜が入っているなんて、なんという悪魔のような料理だろう?
手にしていたものを投げ出すと、テーブルの男性たちは多かれ少なかれ、彼女を品定めするような視線を向けてきた。
特に先ほどの嘔吐シーンの後、これらの男性たちの表情は少し険しくなっていた。
先ほどの誤解を招くような動作は、余計な想像を避けられないものだった。
池村琴子は平然とした表情を保ちながらも、心臓は激しく鼓動していた。
前回山本正博と関係を持ってから約一ヶ月が経っていた。生理は不規則だったので、気にもしていなかった。
まさかそんなに都合よく…?
高橋進も疑わしげな表情を浮かべ、池村琴子と他の人を引き合わせようという思いも薄れていた。
大勢の前で直接聞くのは適切ではないと判断し、紹介の仕方を変えた。
「琴子、ここに座っているのは皆ビジネスエリートで、高橋家の将来のビジネスパートナーだ。よく知り合っておくといい」
「ビジネスパートナー」という言葉が出た途端、彼らの表情が和らいだ。
高橋家は簡単に他の企業と提携しない。一度提携すれば、それは間違いなく儲かるプロジェクトだ。そんな良い話を断る人はいない。
「池村さんは普段どんな趣味をお持ちですか?」と尋ねたのは、池村琴子の向かいに座っている男性だった。
池村琴子は、その男性の端正な容姿と満面の笑みを見て、まるでビジネスマンのようだと感じた。
彼の露骨な視線が不快だった。
ここで他人と駆け引きをする気分ではなく、池村琴子は立ち上がって高橋進に言った。「体調が悪いので、少し休ませてください」
体調が悪い……
高橋進は先ほどの彼女の嘔吐を思い出し、ある考えが頭をよぎった。
もしかして妊娠しているのではないか?
山本正博はもうすぐ他の人と婚約するというのに、この時期に子供を妊娠したら、彼女の人生は台無しになってしまう。
高橋進の表情は険しさを増した。
このような小さな出来事は、結局、池村琴子と他の男性を引き合わせようという彼の気持ちに影響を与えた。そこで立ち上がって他の人々に言った。「今日は日が良くないようだ。また改めて食事会を設けよう」
「はい、高橋伯父」
「高橋社長、では失礼します」