第60章 山本坊ちゃん、彼女を解放してあげて

「彼女の意思でもあり、私の意思でもある」

琴子の話によると、この3年間、山本正博は彼女に対して全く感情を注いでいなかったという。

琴子が彼の介入を許さなかったからこそ、彼女が独り寂しく過ごした最初の1年で、彼は彼女を連れて行くことができなかった。

結婚中に他の女を連れ込んでいた男なんて、ろくな奴じゃない。

近籐正明は退屈そうに机に寄りかかり、腕を組んで嘲笑うように言った。「山本坊ちゃん、彼女を解放してやれよ」

琴子の輝かしい青春はもう台無しにされた。これ以上間違いを続けてはいけない。

彼女を解放するのか、それとも彼らを解放するのか?

山本正博は指を握りしめ、目の奥に冷酷な光が宿った。

池村琴子は結婚中に他の男と付き合い、さらには離婚を迫りに来るなんて、自分を甘く見すぎているのではないか?