第59章 そんなに焦っているのか

箱の中身がとても気に入っていたものの、これで自分を買収しようとしても妥協するつもりはなかった。

山本正博は片目を細め、口角を上げて言った。「私をそんなに下劣な人間だと思っているのか?」

さあ、どうでしょうね?あなたが下劣な行為をするのは一度や二度ではありませんからね。

池村琴子は眉を上げて微笑んだ。

彼女の不信感に満ちた様子を見て、山本正博は心の中で怒りが込み上げてきた。

「高木朝子とは関係ない。ただ山本グループの面目を失わせたくないだけだ。」

池村琴子は彼の言葉の皮肉に気づかないふりをして、にこにこしながら箱を抱え上げた。「では遠慮なくいただきます。これ持って帰りますね、ありがとうございます山本社長。」

彼女は箱を抱えて笑顔で背を向けて去っていった。山本正博がまだ何か言おうとしたが、彼女の逃げる速さに言葉を発する機会すら与えられなかった。